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杉本博司氏 特別講座「現代美術作家の僕が文楽を演出する理由」

主催:愛知県立芸術大学芸術創造センター 開催日:2014年2月20日(木) 愛知県立芸術大学
※CURATORS TV(http://www.curatorstv.com/)による、講義当日のライブツイート(@curatorstv)の内容を転載しています。

講義内容:現代美術家・建築家であり日本の古典芸能の演出も手がける杉本博司氏(紫綬褒章受賞、世界文化賞受賞、フランス芸術文化勲章受勲)の特別講座を開催いたします。聞き手は本愛知県立芸術大学客員教授であり、編集者で美術ジャーナリストの鈴木芳雄氏です。

 1970 年、写真家としてキャリアをスタートさせた杉本氏の考える「芸術を仕事とすること」、ニューヨークと東京を拠点に仕事をする杉本氏から見た「世界を相手にする仕事、日本を拠り所にする強み」について語ります。さらに、オペラやミュージカルよりもむしろ、親しみのない日本の古典芸能である文楽についての対話の後、昨年9月~10 月、マドリード、ローマ、パリで大成功をおさめた文楽(杉本氏の構成・演出による近松門左衛門作「曾根崎心中」)についての報告と、この3月、東京と大阪で行われる凱旋公演『杉本文楽 曾根崎心中付り観音廻り』の魅力について杉本博司氏自らが語ります。

杉本 博司(すぎもと ひろし)

《略歴》1948 年東京生まれ。立教大学卒業後、1970 年に渡米、1974 年よりニューヨーク在住。徹底的にコンセプトを練り上げ、精緻な技術によって表現される銀塩写真作品は世界中の美術館に収蔵。近年は執筆、設計へも活動の幅を広げ、2008 年建築設計事務所「新素材研究所」を設立し、IZU PHOTO MUSEUM(静岡県長泉町)の内装設計他、2013 年4 月4 日にはエントランススペースのデザインを手がけたoak omotesando(表参道)がオープン。主な著書に『空間感』(マガジンハウス)、『苔のむすまで』『現な像』『アートの起源』(新潮社)。内外の古美術、伝統芸能に対する造詣も深く、演出を手がけた2011 年の三番叟公演『神秘域』(野村万作・野村萬斎共演)は2013年3 月にNY グッゲンハイム美術館にて再演(野村萬斎)、4 月には日本凱旋公演も行われた。2013 年9 月~10月に行われた杉本文楽 ヨーロッパ公演(マドリード・ローマ・パリ)では、「構成・演出・美術・映像」を果たす。

1988 年毎日芸術賞、2001 年ハッセルブラッド国際写真賞、2009 年高松宮殿下記念世界文化賞受賞、2010 年秋の紫綬褒章を受章。2013 年フランス芸術文化勲章オフィシエ受勲。

聞き手:鈴木芳雄氏 × 話し手:杉本博司氏

―――写真から文楽など、他の分野に移動したのは銀塩写真の時代が終わったからだとも言えるのではないか。

今日は、吉村順三建築のキャンパスを見学しメンテナンス不足からくる廃墟化してしまったさまに文明の終わりに似たものを感じた(笑)自分がどのような活動をしてきたのか、文楽の話の前にまず説明しようかと思います。美術館の空間をミシュラン的に評価しながら話していきます。

<台湾での公演会でのパワーポイントを流しています。まずは金沢21世紀美術館>

作品を掛けるだけで様になる美術館はいい美術館。

<ロイヤルオリタリオ美術館(カナダ)のOPの展覧会について>

鋭角が特徴の過激な建築に婉曲した壁を設置して海景シリーズを掛けた。美術館建築の際、アートのある空間を考える建築家は少ないのではないか。

<世界中の様々な美術館建築を紹介しながらこれまでの展覧会を振り返り>

原美術館アークは磯崎新建築の中で最高建築であると思っている。建築資金が少ないほどすっきりしていい空間ができる。お金を掛ければいい建築が出来るわけではない。 美術館の四階に能舞台を作り杉本の松林図と共に展示したことが古典演劇の世界へ入るきっかけとなる。 谷口建築は「成長モダニズム建築」で今見てもあまり古いと感じない。豊田市美術館も同じ建築家なのでぜひ。

<杉本建築に関する話題。様々な美術館で展覧会をした杉本氏の建築構想>

直島にある護王神社の改築に合わせての設計が建築に関わるきっかけ。アートとしても神社としても機能するように。

―――護王神社の下に敷き詰められている白い石がレフ版の働きをなし神社を照り浮かび上がらせている。写真家の感覚が生きているようだ。

建築だけではなくIZU PHOTO MUSEUMでは庭も設計。図面がない建築なので現場でつきっきりで指示を出していた。同じく空間デザインをてがけたoak omotesando内「茶酒金田中」は、喧噪の表参道を離れて苔庭を望む閑静な設計。ロビーをアート化してほしいという話から始まった。

―――ロビーは天井の彫刻だけでなく床も見ること。

<小田原文化財団の建築について>

実験的な構造、設計に取り組む。茶室、100メートル作品展示室、海を臨む舞台などを備えている。冬至の日に合わせて作られた建築も。2016年秋オープン予定。

<ヴェネツィアビエンナーレでの新作について>

建築ビエンナーレにて二畳の茶室を作る。ただのガラスのキューブが水の上に浮いているように設置する。客1人亭主1人の茶室を開き、それを外から観客がパフォーマンスとして見る。展示期間は一年半。もしその茶室を欲しいという人がいれば、その方の敷地に移設も可能。

<杉本文楽の話題へ。杉本文楽を取り上げたNHKのドキュメンタリーをかいつまんで鑑賞>

毎回、公演の度に文楽では手を加えている。ヨーロッパ公演では束芋氏とコラボをした。大阪では席に余裕があるのでぜひ来場してもらいたい。オペラグラスや双眼鏡で全体とクローズアップ両方を楽しんでもらいたい。曽根崎心中発祥の大阪で、鎮魂の意を込めて公演を行う。

―――質疑応答

Q:伝統芸能を生業とする人々と仕事をするときは、普通のアーティストの方と仕事をされるときとスタンスに何か違いはあるのか?

A:伝統と呼ばれているものも、実は明治以降に再演されているもの。古いことをやることが一番新しいことであると説得する。紫綬褒章の力に頼ることも(笑)

Q:歴史との向き合い方について。古いことをやって新しいことにつなげるとき、昔の人は見えていたけれど、現代の人には見えていない風景をあぶりだしているが、同時に逆に現代人に見えて昔の人に見えないものを、クリエイションしていく視点についてはどう考えるか。

A:古典を現代人の感性にあわせる。テンポや曲などを現代的なものに調整し、近世のメンタリティなどを解釈しなおして現代人が何を失い何を得ているかを考えた。その時代のこころを知るためにコレクションなどに触れて自分のなかに解釈しなおす。オペラと文楽の共通項や演出で考えたことについて。伝統を変えてはいけないということではなく、形式を壊して新たなものにすることは有意義。

以上、全てCURATORS TVのTwitterより。